タレントには虚像と実像があるのが当然ですが、悪役専門の女子プロレスラーが少女のような心根のだったり、清純でぼお〜とした女の子が、実は芯がしっかりしてたりします。
はたして山田邦子はどうだろう。先日深夜番組で山田邦子をデートに誘うというものがあり、私の愛車シトロエンで山梨の方へドライブに出かけた。デビュー当時は、男の感性を持ったお笑いをやるために生まれてきた女性に写ったが、なんともしおらしい女になっていた。女を捨てていない。画面では、男なんてなんぼのもんじゃい的な強気が見え隠れするが、男性とのお付き合いでは「男に身をまかせ、男の言うがままについてゆくタイプ」なんだと。テレサ・テンが入っているとは見えません よね。男まさりの女性と期待して近づくちょっとマゾの入った男性は、その落差にびっくりしてかえって退散しちゃうのかも。そんなことはともかく邦子君に読んでねと言われて、昨日読んだ本はこれ「ヘアメイク神井結の芸能界ミステリー案内」。
ヘアメイクだから神井結(かみいゆい)なんですね。あらまあ書いてみて気がついた。その前に読んだのが今本屋に山積みされてる「ひまわり祝祭」。ゴッホに興味があるので手にしたが、なんだか文章が気取ちゃってまどろっこしくてあらあらといった感じだったので、「ヘアメイク……」の単純明快な素直な文章は新鮮な感じ。同じミステリーでこうも違うか。題材のスケールは確かに小さいが、アイデアはなかなかお見事。警察ざたにならないミステリー、でもいたずらにしては深刻な話が四っつ入っている。芸能界の一般の人が興味ありそうで、モデルがいそうでいない話をほどよく誇張してる。話の転がし方はさすがお笑いのオチを知ってるなといった感じ。知らずに引っぱられてゆく。華やかな芸能界の哀歌が実感として感じらられる歳に山田邦子はなってしまったんだなと印象づけられ本でありました。
ヘアメイクといえば男性も本番前にはやるんですが、メイクさんにも色々いて、ドウランを塗るのにスポンジを使う人と素手でやる人がいます。男性メイクさんに素手で顔を触わられるとなんだか人に見られちゃいけないような倒錯した時間とはこんなももかしらという気分になるんですな。やはり女性がいいです。女性メイクさんの中には、自分の胸でタレントの後頭部を支えて、鏡を見ながらドウランをのばしてくれる方がいるんですね。なんだかウットリしてしまいます。本番でリラクッスできるようにメイクさんも影の努力をしてるんです。本番前の元気を出さしてくれるメイクさんこれからもがんばって!
神井結さんも業界のドロドロ部分にもっと深く入いれば、凄い本が書けそうな予感がします。
( 協力 / 桃園書房・小説CULB '97年8月号掲載)