ああ〜めちゃくちゃ憎しい。なんたる事だ。昨日、「われ目でポン」という深夜の麻雀番組があった。予選敗退。相手は風間杜夫、加賀まりこ、なぎら健壱。東風戦で4ゲームやり、上位2人が次へ進める。最終ゲームまで風間と私が、他の2人をダントツに引き離していた。自分が飛んで加賀さんがトップにならない限り逆転はありえない。ほとんど不可能な状況で、大逆転がおこった。加賀さんに裏ドラがバカバカ乗って倍満をつもり、運悪く、われ目の親の私が見事に飛んだ。
『人生、惚れてこそ』に書いてある。「なぜ、大逆転が起こるのか」。米長さんは言う「結局、逆転というのは、やっぱり弱いほうが逆転負けを喰います」。くそ、涙目の俺に追い討ちをかけやがって、そんなことわかってら、確かに俺は強くない。番組でも、多牌はするわ、少牌はするわでヨロヨロだったが、撹乱戦法は功を奏していたのだ。もう大丈夫という安心感、これがいかん。攻めの気持ちが守りになる。畜生、結局はコメディアンになって、笑いを取って、番組に貢献してしまった。
しかし、なぜ俺は勝負ごとに弱いんだろう。麻雀しかり、ゴルフ、囲碁。それでいて勝ち負けが大好きなのだ。将棋界のトップ、米長さんと羽生さんに教わる事にした。
最近の勝負ごとの傾向として、スポーツ界もそうなのだが、野茂、イチロー、柔ちやん、天才達が口を揃えて言うのが「楽しんでやる」という言葉。昔の根性論など何処にもない。この2人の天才棋士の対話も随所にそれを感じる。その点では私も天才たちとなんら変わらない。どこが違うのか。頭の構造といってしまえばそれまでだが、努力というより勉強の仕方、これが決定的に違う。つまり、上達するための方法論を見つける事に長けているのだ。
目からウロコが取れる言葉があった。「勉強というやつは、やればそこの部分は伸びるんですけど、どこかにマイナスが出ると思わなければいけません」。すごい言葉だ。知らなかった。「総合調整能力」と言うらしい。やればやる程、マイナスがでるんだと。それでだ!ゴルフで、ドライバーを勉強し過ぎれば、アイアンがダメになり、アイアンがうまくなればドライバーがダメ。どの勉強をどの位やるかが問題になるんだと。天才達はそんな事を考えていたのだ。
根っから努力の嫌いな私には力強い言葉ではないか。やってマイナスになるなら、ごく少ない勉強で満遍無く。これでいいのだ。いや待てよ、総ての認識がこうした楽観的な所に、敗因があるんだろうな。性格は変わらんしな。「楽しんでやる」ここが天才と一緒だからいいや。この本を読んで、これだけ身にならない読者がいるとは、2人もガッカリだろう。ザマアミロ!( 協力 / 桃園書房・小説CULB '96年6月号掲載)