先日、タモリ倶楽部で「官能文学タイトル大賞」と言うのをやったのだが、圧倒的なH本の多さにぶったまげてしまった。タイトルが傑作ぞろい。私が好きだったのが「顔面騎乗」、「柔壷」。大いに笑わせてもらう。
概してタブーに挑戦したものが多く、縛り、監禁、制服、近親相姦、レイプ、変態、ホモ、レズとバリエーションも豊富だ。そしてこの手の本が売れているのだと言う。本を読み、イメージするのは、実際の行動の代償行為だろうが、その歯止めが切れる時、あの大量のH文庫本が実生活に攻め込んで来たら、こりゃ人間は凄まじい動物になるぞ。いやいや現実にSMやら、いろいろなタブーがお金を払って行われている訳だから、プレイの枠がとっぱらわれる日はそう遠くないかも知れない。あなたの隣の人はひた隠しにして超変態かも。
実際に4、5人集まって変態の話を振ると、出てくるわ、出てくるわ。「オレの知っている奴で……」という始まりで、ウンコを食べたとか、あいつは縛り上手でさとか、精液を口に含んで鼻から出す女とか、真剣になったり笑ったり。変態話は喋り手の性癖が分かって面白いよ。
そんな話の参考になるのがこの。『アブノーマル・ラバーズ』。変態の本物さんが登場する。家田さんのインタビューに答えて、さまざまなアブノーマルな性を語っているのだ。私がショックを受けたのは、何といっても監禁願望だ。男の監禁されて放置されたいという欲求。女性を監禁する方であれば理解できる。その他のSMやら女装、パンツ好きぐらいなら理解どころか気持ちいいかも知れんなあという気がする。ところがだ、自分の一生を棒に振っても、死ぬかもしれないが監禁されて放置されたいんだと。ならば刑務所に行けと言いたいが、それじゃダメ。本格的Sの愛する女性にして欲しいと言う。このSにしたって、別の変態が「Mをマスターしないと本物のSにはなれない」とか語っちゃってくれているのだ。ウ〜ム、性は奥深いな。
しかし、これを読んで安心したのは、変態はノーマルなSEXでは感じなかった人に多いと言う事。ノーマルなSEXで充分な快感が得られる私は。少なくとも本物の変態ではないだろう。ノーマルから何歩も踏み出してイメージした所で、単なるスケべなおじさんでしかない。本物の変態に失礼と言うものだ。人肉食べた佐川さんも、殺す前のイメージの方が楽しかったと言っている。そこで止められないのが本物の変態だ。
家田さんは本物の変態に対して、理解できない事もあるが、時として愛しいと思うと書く。変態は相手を探すのが非常に困難ということもあって孤独だ。私も協力はできないが、愛しさは持ちました。
( 協力 / 桃園書房・小説CULB '94年8月号掲載)