本の帯に「読後のビールの旨さ保証付き」とある。確かに喜びを分かちあえる感じで滅茶苦茶ビールが旨かった。青春は良いです。この手の青春小説に意外と私は弱いというか、涙腺を刺激されることを再認識してしまいました。
高校教師がアメリカン・フットボールの同好会を結成し、やっと集まった11人が、初めてのタッチダウンをするまでのお話。まさにシンプル・イズ・ベストのストーリーである。若い頃、ラグビーの青春ドラマをよくテレビで見ていたが、チームワークとか、ダメな奴ががんばる姿勢、エゴイズムのない正義感、チームを裏切っているように他人には見えても実はそうでないことが後でわかり信頼が強くなる。人間がスポーツに関わる純粋さに随分泣かされたもんです。この“俺はどしゃぶり”も青春だから可能なチームワークがありました。プロのスポーツではない訳ですから、勝つことによって収入がある訳ではありません。それでも勝とうとして汗を流す。チームワークという幻想が、喜びを分かちあえるということが、最高の幸福になる。イメージの多感な青春時代でしか味わえないものでしょうね。私はその多感な高校時代、落語のクラブで毎日正座で足をしびれさせて「毎度ばかばかしいお話を・・・」とかやっていました。ものすごく個人的な作業。だからチームワークにはいまだに憧れてます。私は巨人ファンで野球は見ますが、そこにはチームワークはなさそう。自営業が集まってる感じです。運動能力の低い奴をみんなでひっぱっていく、プロの世界ではありえません。ダメな奴はダメです。「どしゃぶり」の世界は、どうしようもないデブのダメがチームのために上から根性を植え付けられのでなく、自ら汗を流す。ちょっと見苦しくも滑稽ですが、とりあえず役割が果たせるようになる。現実の今の高校では、これほど御陽気なクラブは存在しないかもしれません。だから小説なんですね。いいじゃありませんか。お金という目的でなく、チームの心がひとつなれる。そして灰になったような虚脱感の中での乾杯。
私も芝居のやり始めの頃は、うまい人も下手な人もいて、必死の稽古を重ね、なんとか芝居になり、それが打ち上げた時、灰になったような感覚を味わったものです。あれもチームワーク幻想でしょうね。チームワークには下手な人が必要なのかも知れません。弱点をカバーしあえる力。まあ高度なチームワークとはいえませんが、優しさのあるチームワークは感動できます。でもそれが勝利と結びつかないのも現実。
今日もサウナで汗をかいて、アメフトチームの勝利を願ってビールを飲もおっと。
( 協力 / 桃園書房・小説CULB '99年10月号掲載)