恒例の5月の我々のライブで、ものすごい集中力を使いすぎて、脳味噌が混乱気味であります。今日は何曜日なのか、時間の感覚もぼよよ〜んとなっております。こんな時どんな本を読めばいいんでしょう。論理的な本も受け付けず、情緒的なものもいや、ミステリーも、まあいいやという感じ。頭の混乱をうまく利用して楽しめるものはないかと、探しているとありましたね。理屈もなければ、混乱そのものの本が。「世界の神話と伝説・神々と英雄」。もうでたらめですね。笑えます。子供むけかなとも思うのですが、筋道たてて物を考えたくない時にはぴったりの本です。
北欧の創造神話では、悪い心をもった巨人イミルが眠って汗をかくと、左のわきの下から男と女が生まれ、左の足から、もう一人の男が生まれました。だって。セルビアの方では地球にたどりついた神様のまゆげにたまった汗のひとしずくが地面におちて命がうまれ、最初の人間ができたとあります。私たちは神様のまゆげにたまった汗ですよ。どう考えればいいんでしょうか、しかもその神様は旅の疲れで汗をかいたんです。命はなんだか、それほど尊いものではなさそうです。虚無感があります。まあ大人はいろいろ理屈をつけますが、子供はそのまま受け入れるんでしょうね。神話を読むときは子供にならなければいけません。この本を読んでると、ほんとに素敵な時間が流れます。もうでたらめで、展開が早いので、神様はギャグ好きかと思ってしまいます。日本のアイヌ神話だって負けていません。創造神が世界を作ろうとした時に魔物が邪魔をして太陽を飲み込もうしたときにカラスがのどに飛び込んでのどをつまらせ助かったんです。どうです。太陽とカラスの大きさを考えたとき、その説得力のすごさは子供にしかわかりません。カラスは一度世界を救ったことがあるので、何をしてもいいと思って、人間の食べ物をぬすんだりするそうです。他にも笑えることだらけ。インドネシアやオーストラリアのアボリジニの人間の誕生もすごいです。アボリジニでは植物や動物から人間が生み出されているんです。自然を大切にするわけです。アフリカのほうの神話では「なぜ私たちは死ぬのか?」ものすごいですよ。神様が人が死んだら灰をふりかければ生き返るという伝言を犬にたくすんです。ところがその犬がぶらぶらしていて用をたさないんですよ。だから今度は羊にたくすんですね。そしたら羊は何を伝えるのか忘れてしまい。人が死んだら土にうめなさいとか伝えちゃんですよ。それで人間は死ぬようになったんですって。どうです。死ぬようになったのは羊のせいですよ。羊の見方が変わりそうです。のどかに生きようと思わせてくれる本でした。
( 協力 / 桃園書房・小説CULB '99年6月号掲載)