ヒラメの巻
私はお芝居に夢中な青春時代、ある演出家からヒラメと呼ばれた。ちょこっと屈辱的な気分がしたものだ。「おいヒラメ!、おまえは何を表現したいんだ!もう一回!」と、だいたい怒られる時にヒラメと言われる。私の顔は確かにヒラメのようにのぺっと平らで凹凸がなく、目と目が離れている。それだったらカレイでもよさそうだが、ヒラメなのである。カレイには「華麗」という意味にとられそうで、怒る時には相応しくないのかも知れない。料理の世界では、カレイは居酒屋の唐揚げ、ヒラメは寿司屋の高級魚。その扱われ方は雲泥の差がある。でも言葉にするとヒラメは内容がなさそうな、うすっぺらな響きがある。ヒラメだって名前を変えて欲しいに違いない。「俺の持ってるどう猛な歯と野性をもっと評価しろ!」と叫んでるに違いない。白身の魚と呼ばれるのだって、なんか弱々しくて勘弁してもらいたと思ってることだろう。カレイが「華麗」ならヒラメも「キ」を後ろに付けて「閃き」と呼んであげたいものだ。なんだか発想の鋭い優秀な魚のような気がするではないか。
ちなみに私がヒラメなら、マラソンの増田明美さんはカサゴで吉本興業のホンコン君はアンコウですな。
東京中日スポーツ掲載