タイの巻
サンマがすらっとした粋な伊達男なら、赤みをおびたタイは華やかな超一流の花魁でしょう。現代の女性に例えられないのは、魚の色合いがサンマもタイも和服を着ているような感じを持つからでしょうか。それにタイのふくよかさにミニスカートは似合いそうもありません。サヨリならスカートもパンツも似合いそうです。
タイは私の中でベスト3に入る魚なんですが、なんと言っても、焼いた後、冷たくなっても食べられる魚ベスト1ですね。結婚式のおみやげで折り詰めになったタイは、たっぷり塩がきいて酒がすすみます。「う〜ん、腐ってもタイだな〜」と思わず口にでる瞬間であります。別に腐ってはいないんですが、ほんとにタイは腐っても食べられるんでしょうか。あれは、花魁はふてくされても美しさには変わりはないという意味なんじゃないかとも思います。タイに聞いたところ、一番ふてくされるのが、カブトだけ食べられる時だと言ってました。我々人間には最高にうまい所ですが、タイには屈辱です。「なんで頭だけ食うんだ失礼な」と情けながっておりました。先日、浅草の雷門あたりで沢山の人。「う〜ん、腐っても浅草だな」と思わずつぶやくと、隣にいた見知らぬ地元の方に、「浅草は腐っちゃいねい!」と怒られました。どうも「腐ってもタイ」は誉め言葉じゃないようです。
東京中日スポーツ掲載