ウナギの巻
私はウナギを一日で7匹食べたことがある。もちろんグルメ番組のお仕事です。大崎から静岡方面へウナギ街道と称して食べ歩いた。大崎では、かのワンマン総理吉田茂さんがよく通われたというウナギ屋さんがありまして、家に出前する時は、吉田さんが通り道の赤信号をすべて青に変えたとか言っておりました。ものすごい時代です。しかし私も、7匹も食べるなんて、若くなくしてはできない仕事でした。最初の頃は「ウサギ追いし、かの山」にかけて「ウナギおいし、この店♪」と陽気に童謡など歌っていたのが、どんどん落ち込んで、最後のほうは、養殖場で餌に群がるウナギのようなどう猛な気分になったいく。実際グルメ番組は見ている程、幸福気分じゃないのです。食べたい時に食べたい物を食べる訳じゃないですから…。まあ、仕事ですから当然ですか。
それにしても、ウナギ屋さんはメニューに「松」「竹」「梅」とランクがあるんでしょう。貧乏時代はどうも「梅」と言いづらい。店の人に「やっぱり貧乏だ」と思われる感じがするんです。見栄を張って、「松」は無理でも「竹」とか言ってしまいます。財布に余裕が出てきた今は堂々と「梅!」ってスパッて言えます。だいたいあのランクはウナギの量で質は違わない店が多いんです。注文しやすい様に「太郎」「次郎」「花子」とかにして欲しいものです。いやいや返って、ウナギに名前がついたら食べづらいか。
東京中日スポーツ掲載