アユの巻
ある著名な料理人と旅をした時、「アユは笹でくるんで焼くとうまいんですよ」と言われた。感心してると「これを称して愛(アユ)のささやきといいます」だって。このオヤジギャグに腰を抜かしてしまいました。洒落を言いたいために作り出した料理としか考えられません。アユは何もくるまず丁寧に焼くに限ります。
アユがこんなに旨いものなのかと思ったのは、知り合いが相模川で釣ってきた冷凍してあるアユです。半年くらい経っているという事でしたが、旨い旨い。京都の料亭で食べたアユよりうまかった。誰が釣った魚か養殖かわからないまま食べるのと、釣り人がはっきりわかって食べるのとではひと味違います。ちなみに、天然のアユは口先が平らになってるらしいです。苔を必死についばんだ形跡なんでしょう。
アユ釣りは誰もが簡単にできないので、こだわりの職人さんって感じがします。釣ってる姿は、川の風景に一役かってます。私も一度だけ仕事で四国の四万十川でやらせてもらった事があります。その時指導してくれたアユ釣り名人がものすごい。地元でなんと「四万十の水牛」と云われているんです。名人は川に入ると首まで水につかる深いところまで行って、水面に顔と釣り竿を持つ手しか出てません。まさに水牛です。風情というより、声を出して笑ってしまいました。
東京中日スポーツ掲載