フグの巻
飲み代をおごる方が最も得意げになれるのがフグです。「焼き肉食べようか」とか「寿司にする」とか言われるより、「フグはどうです?」と言われると、う〜ん、この人は大物だなとひれ伏したい気分になる。フグに限らず、おごる場合は一点に限定することが肝心です。「あそこのハラミは最高だよ」「あの寿司屋のコハダいこうぜ」と限定する人は大物感があります。私の場合は「あの店の塩ラーメン食べよう」と限定するんですが、今ひとつ大物感がありません。やはりお値段なんですかね。
落語に、フグ屋にいちゃもんをつけて金をせしめようと「お前んとこのフグにあたったぞ、どうしてくれるんだ」と怒鳴り込んだら、「おかしいですね。当店ではフグは出しておりません」と言われたと云うのがあります。高級魚フグと庶民感覚のバランスがおかしいですね。私も薄切りにして透けてるようにお皿に盛られたら、もう全部フグ刺しです。私のフグ体験は浅草、大阪、下関でありますが、当然奢って頂きました。場所やら、ごちそうになった方の得意顔を覚えているんですから、フグの力は絶大です。薄く切ったフグ刺しを箸で大量につかむゴージャス感を味わうには、やはり他人のお財布です。あ〜、ヒレ酒が飲みたくなった。スーパーで乾物のヒレを買ってこよう。
東京中日スポーツ掲載