お魚の話

新コーナーお魚の話。きたろうとお魚のエピソードなど書いています。
以前、東京中日スポーツにて掲載されたものです。(全10話)

 タコの巻

 新鮮なタコの刺身の食感は舌と歯と喉ごしと、すべてを総動員できる旨さがあります。

茹でても旨いですが、やはり生ですね。吸盤が舌に吸いつく感じはドキドキ、野蛮な気分になれて最高です。この絶品の味のタコが、なぜ人を蔑視するときに「このタコ!」って使われるんでしょう?これはタコには責任がないのです。語源はイカと対応してらしいんです。江戸時代、将軍にお目通りできない下級武士をお目見え以下(イカ)と言われていて、上流の武士の子供たちが「イカ、イカ」と下級武士の子供をバカにしたらしんです。それに対抗して「うるせい!タコ」と言い返した所から始まってるんです。やはり、もともと意味のない言葉の方がインパクトがあって、現代まで生き残るんですかね。

 それにしても、マダコ、マアジ、マイワシとか魚の前に「マ」がつきますが、なんなんでしょう。他の魚はともかく、マダコと言えば真(しん)のタコなんですかね。純粋なタコ野郎と言われてうれしいんでしょうか。私なら怒ります。アジやイワシにしても「マ」がつかない種類は、なんか偽物みたいな気分にさせられて不愉快に違いありません。

人間だって、「マニンゲン」と「ニンゲン」に分けられたら、どうするんですか!偏見と差別はやめましょう。でも、マグロはマを取ったらグロですか。グロテスクじぁ、困ったなあ。これからマグロは点々をとって「クロ」と可愛く呼びましょう。

東京中日スポーツ掲載


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